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伝説のテクノロジー

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世界一の音楽ホールをつくりたい

軽井沢大賀ホール 元相談役・支配人 大西泰輔さん

「やればできるじゃないか」

 音楽ホールの性能を表すときよく使われるのが、残響時間という指標だ。一般にクラシックの場合、2秒が最適と言われている。しかしそれは大規模ホールでのこと。中規模ホールで残響時間が2秒もあると音が響きすぎて割れてしまう危険がある。そこで軽井沢大賀ホールは、満席の状態で1.7秒となるように設計された。

 建物が完成し、内装もほぼ終えた2005年の早春、地元の人の協力を得て、客席を満席にした状態での音響テストを実施。測定の結果、音響時間は設計通りの1.7秒を記録した。

 残響時間の適否は、演奏の評価にまでつながることもある。関東某県のオーケストラはいつも、残響時間の短い地元のホールで演奏会を行っていた。そのオーケストラがあるとき、軽井沢大賀ホールで演奏会を行った。いつも関東の地元でこのオーケストラの演奏を聴いているファンが、演奏会終了後、アンケートにこう書いていた。

 「やればできるじゃないか」

 ホールの音がいかにいいかを物語るエピソードである。

 この音の良さに魅かれて、軽井沢大賀ホールでCDのレコーディングを行う演奏家もいる。昨年、惜しまれつつ亡くなった日本を代表するピアニストの中村紘子さんは、デビュー50周年を記念するアルバムをつくるとき、ほとんどの演奏をこのホールでレコーディングした。前橋汀子さんや千住真理子さんもレコーディングをしたことがあるという。

 そんな超一流の演奏家たちが集う一方で、軽井沢大賀ホールでは地元の音楽教室の発表会で子どもたちが楽器の演奏をしたり、小中学校の合唱大会が開かれたりもする。

2006年開催の「春の音楽祭」。大賀典雄指揮、東京フィルハーモニー交響楽団で、モーツァルトの『交響曲第40番ト短調』などを演奏。

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