次代への羅針盤
社会に届いてこそ研究には意味がある
武岡真司
「論文を書いて終わり」ではダメ
メジャーリーグで採用されるかどうかはともかく、研究はきちんと社会実装するところまで行わないといけないと私は考えています。研究は、社会に届いてこそ価値を生みます。
これは自らの反省も込めているのですが、大学の研究者はこれまで論文を書いて終わりという面がありました。しかし、それではせっかく創出した技術やシステムが一般に利用されないままで終わってしまいます。私たちは、一般の人が普通に使えるものをつくり上げなければなりません。
早稲田大学と女子医大は2010年、日本初の共同大学院を設立し、医療レギュラトリーサイエンスという新しい領域を立ち上げて運営しています。社会実装することを目的にした研究を行うのがミッションで、科学的根拠に基づき、新しい医薬品や医療機器、細胞、プログラム、医療システムに対して、有効性、安全性、経済性などの評価、そして社会と調和させるためのルールに関する研究を行っています。
こうした取り組みには、企業との連携が必要です。共同大学院の院生も、多くは企業や医療機関などに勤めている社会人です。私自身、企業の研究者と接する機会がよくあります。企業との共同研究の現場を見ていると、企業の方はとても丁寧に学生をガイドしてくださり、学生にとってよい刺激になっています。