One Hour Interview
微生物の「会話」をひもといてメタンを生成
前田憲成
実用化の壁はコスパ
現在の研究はどういう状況ですか。
嫌気消化を促進させて下水汚泥からメタンをつくり、エネルギーとして活用できるようにすることを目標にしています。そのためには協力的な促進菌と足を引っ張るような阻害菌、この両方がどの程度いるのかなどを把握する必要があります。
そういう菌はどうやって見つけるのでしょうか。
次世代シーケンサーを使っています。クォーラムセンシング分子にインドールを使い、反応させてメタンが増えたとき、あるいは減ったときに微生物種の何が増えて何が減ったのかをシーケンサーで解析しながら特定していっています。
もう特定できていますか。
促進菌も阻害菌も、その候補となるような菌は見つかっています。
最終的にはそうした仕組みを使ってメタンを効率よくつくり、環境問題やエネルギー問題の解決に貢献しようということですね。そこがゴールだとすると、今は何合目くらいまで進んでいるのですか。
8割くらいまでは来ていると思います。
すごいですね。でも残りの2割が難しいのでしょうか。
企業の方から相談されることもありますが、結局、コストパフォーマンスが問題になります。コストの見積りがまだできていません。
実用化を目指されているのですね。
もちろん、その可能性は十分あると考えています。今の仕組みだと嫌気消化の副産物で硫化水素ができるのですが、この生成量を抑制できればメタンの生産量が増えます。だから、硫化水素をつくらせないようにする方法も研究しています。金属を腐食させる働きのある硫化水素を抑制できれば装置の寿命も延びることを実証し、最終的には社会実装につなげていきたいと思っています。