ハリマ化成グループ

伝説のテクノロジー

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家具製造

やまとわ代表取締役&家具職人・中村博さん

家具づくりにアカマツの性質を活かす

 当初の5年間はたった一人で木工品をつくるワークショップなどを開きながら情報発信をしていたが、一人では限界があると気がつき2016年、やまとわを設立した。やまとわは、漢字にすると「山杜環」となる。自然と里山をつなぎ、循環する社会をつくっていくとの意味がそこに込められている。

幅ハギ板にカンナをかけ、滑らかに仕上げていく。削りカスからは爽やかな木の香りが漂い、工場を満たす。やまとわでは、アカマツだけでなく栗やクルミなど、地元の木材を加工している。

 日本の森を健全に循環させ、再び森と人の暮らしを近づけることを目指す中村さんたちは、農林業や森のプランニング、そして地元・伊那の木を使ったものづくりを始めた。

出来上がった木板に樹脂を塗り、製品として仕上げていく

 「長野県が使用を推奨していたので、僕も最初はカラマツを使いました。でも、カラマツには針葉樹合板に使われる市場が徐々に形成されていき、高価格で売買されるようになりました。そこで次に地元で多い樹種を調べたら、上伊那の森林の21%くらいがアカマツであることがわかったのです」

 その頃、伊那谷でも病害虫のマツノザイセンチュウによる松枯れが始まっていた。枯れてしまった木は切って廃棄するしかない。ならば、松枯れが起きて廃棄される前にアカマツを使おう。そう考えた中村さんたちは、2017年からアカマツを使った家具づくりを始めた。しかし、家具づくりで一般的に使われるのはナラやブナなどの広葉樹で、針葉樹のアカマツが使われることは決して多くないという。

使われるアカマツは、戦後に植林された樹齢70年前後のものが多い。

 「アカマツは幹がまっすぐではなく曲がっているので商流に乗りにくいと思われがちなのですが、職人が木に寄り添ったものづくりをすれば、いいものができます。アカマツは全体に適度な油分を蓄えているので、手触りがしっとりして粘り強い特質を持っています。また、一般的に家具に使われる広葉樹に比べて柔らかくて軽いのですが、杉のように乾ききってしまうと加工しにくいということもなく、逆目でも削ることができます。こうしたアカマツの特徴を活かした家具づくりを考えました」

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