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伝説のテクノロジー

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ステンドグラス製作・修復

ステンドグラス職人・松本一郎さん

世界最高水準の強度

 実際、同社がつくるステンドグラスは耐風圧試験で±200㎏の性能を確認しているという。これは風速56.6メートルの強風にも耐えられることを意味しており、松本さんいわく「世界最高水準の強度」なのだそうだ。「私が知る限り、何かが飛んできてガラスが割れるといった不可抗力的な例を除けば、うちのつくったステンドグラスが壊れたことは一度もありません」

ガラスの周囲にガリを入れ、パテがくっつきやすく、剥離しにくくする。

 と松本さん。ちなみに同社が手がけてきたステンドグラスは創業以来6,000点以上に及ぶという。

 ケイムの溝の幅は4.5mm。ガラスの厚さは約3mmなので、溝に入れただけでは隙間が空いてガタついてしまう。そこで同社はその隙間にパテを入れることで補っている。パテが剥離しないようにガラスの周囲にはあらかじめ細かい溝をつけておくことも重要だ。さらにパテを入れてからケイムの角をつぶす。そうすることでパテが落ちにくくなるうえ、空気に触れる表面積が狭くなり、劣化しにくくなるのだ。手間はかかるが、この一連の作業で耐久性に数十年の違いが出るのだそうだ。

はんだのフラックスに使われる松やに。

 もう一つ、同社の大きな特徴は全面はんだ工法であることだ。ケイムの表面すべてにはんだをかけることで膨張係数が均一になり、強度がより一層高まるのだという。全面にはんだをかけることで鉛が表面に露出しなくなるという利点もある。

 なお、同社は新規にステンドグラスを製作する際は、はんだのフラックス(促進剤)に松やにと牛脂を混ぜたものを使っている。一方、既存のステンドグラスを修復する際は市販のフラックスを使用する。市販のフラックスでは塩化亜鉛が含まれるため、ケイムにダメージを与える可能性がある。新規に製作するものはできる限り耐用年数を長くしたいので、ケイムに与えるダメージが少ない松やにと牛脂を混ぜたものを使うのである。松本さんによれば「はんだごての先端に熱が通りにくくなったときも松やにを使って洗浄している」という。

鉛の表面に松やにを塗っていく。

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