ハリマ化成グループ

伝説のテクノロジー

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世界一の音楽ホールをつくりたい

ロジン技術者藤田定行さん

松にストレスを与えない採集を

 藤田がハリマ化成に入社したのは1972年のことであった(当時の社名は播磨化成工業)。当時は石油化学の全盛時代で、姫路工業大学で応用化学を専攻した藤田も、石油化学系の企業に就職することを考えないわけではなかった。だが、大学の指導教授から「加古川に松やにで化成品をつくる有望な会社がある」と勧められた藤田は、「人とは違ったことをしたい」という思いもあり、ハリマ化成に入る道を選択したのだった。

 最初に配属されたのは、米国産の粗製トール油から高品位のトールロジン※1を分離するプラントであった。以来、藤田は40年以上にわたり、松やにに関わる仕事に従事し続けてきた。その間にはブラジルのガムロジン※2蒸留工場に赴任したこともあったし、中国広西チワン族自治区を訪れ、手作業で松やにを採集している現場を視察したこともあった。

 その藤田は長谷川社長の指示を受けたとき、こう考えた。

 「せっかく、国産の松やにをつくるのであれば、自然環境にやさしく、松になるべくストレスを与えない方法で最高品質のものをつくりたい」

 そして、①分泌促進剤は使用しない②金属製の釘や樋(とい)は使用しない③松やにを採集するために松につける溝は必要最小限に④淡色の生松やにを採集する、という目標を立てた。

 こうした目標の下、藤田はまず50年以上前にどのような方法で国産松やにが採集されていたか調べてみた。だが、採集方法や精製方法などを知るために必要な文献は散逸して、ほとんど見つからなかった。ただ、藤田はハリマ化成の創業者である長谷川末吉から、かつての手法を直接聞いたことがあった。そのときの記憶を頼りに藤田は手探りで国産松やにの生産に挑んだのである。

※1=トールロジン 松材から製紙用クラフトパルプをつくるときに、副生する粗トール油を蒸留してつくる

※2=ガムロジン 松の立木から集めた生松やにを蒸留して得る

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