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伝説のテクノロジー

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狂言は人間の弱さを面白おかしく表現する“立体落語!!”

狂言師 善竹十郎さん

時間をかけ、体や耳で悟るしかない

 一方の「間」については、「間(あい)狂言が特に難しい」と言う。

 能の曲目のときに狂言師が登場して、ナレーターのようにストーリーを説明したりすることを「間狂言」というが、その語り方は曲目によって異なる。女性が主役の恋物語なら、ゆっくりとした調子で静かに語り、戦(いくさ)ものなら強い調子で、という具合だ。間狂言の出来によって会場全体の雰囲気まで違ってくるというから、役割重大だ。

 「計ったように正確な間を取らないといけませんし、能の種類によって響きも変えなければなりません。そういう技は、何度も何度も繰り返して身に付けるしかありません」

 今はビデオもテープレコーダーもある。国立能楽堂に行けば、誰でも能や狂言のビデオを見ることができる。けれども善竹さんは、そうした機械類を一切使わないという。

 「長い時間をかけて、体や耳で悟るしかない」と考えているからだ。

善竹さん、ご自身で打った面。使っている素材は檜。うつむき加減で怒って見えたり、笑って見えたり表情が変わる。

 狂言に登場するのは、たいてい2~3人。主役は「シテ」、脇役は「アド」と呼ばれる。もちろん舞台に立つ役者だけでなく、バックコーラス役の「地謡(うたい)」や、楽器を演奏する「囃子方(はやしかた)」なども狂言には欠かせない存在だ。

 「狂言の謡いだけでなく、能の謡いや舞も習いました。高校から大学までの間は、笛や小鼓などの稽古もしました。狂言師が囃子方として楽器を演奏することはありませんが、やはり知っておく方がいいのです」

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