次代への羅針盤
realize your mission(あなたの使命を果たしなさい)
堀邊英夫
選んだ道でやるべきことをやる
私の人生はずいぶん紆余曲折がありました。運がよかった面もあると思いますが、振り返ってみると、自分なりに努力してきたのも事実です。
企業からアカデミアへ、あるいはアカデミアから企業へ。研究者の進む道は単線とは限りません。いろいろな生き方があっていいのだと思います。大事なのは、自分が選んだ道で、やるべきことをやるということです。
「realize your mission」
私の好きな言葉です。
「あなたの使命を果たしなさい」ということです。
人は誰にでも、使命があります。私は、研究を通して教育をすることが自分の使命だと考えています。学生や、企業の研究者、技術者にも、それぞれの使命があります。その使命を懸命に果たすのが、人間としてのあるべき姿ではないでしょうか。
どんな職場、どんな仕事でもそれは変わりません。
隣の芝生は青いといいます。しかし実際に隣の芝生を近くで見ると、荒れた部分や枯れた部分に気づくこともあります。他人をうらやむのではなく、それぞれの立場で与えられた使命を精いっぱい果たしていく。一所懸命取り組んでいれば、必ずそれを見ている人がいるものです。そうした人たちの助けもあって、いい方向に進んでいけるようになるものです。
かつて世界の最先端を走っていた日本の半導体産業は、今や、韓国や台湾の後塵を拝しています。総合電機メーカーも大きく後退してしまいました。大学の研究力も低下したといわれる中、日本は今、非常に厳しい局面に立たされています。
今後、日本の産業や大学はどうあるべきか、答えはまだ見出せていません。しかし、だからこそ「realize your mission」という言葉を胸に深く刻んでほしいと思います。
研究者の道も
単線とは限らない。
堀邊英夫[ほりべ・ひでお] 1962年、大阪府生まれ。京都大学工学部合成化学科卒業。三菱電機に入社し、18年間勤務した後退職し、高知工業高等専門学校の助教授に就任。以後、金沢工業大学教授、大阪市立大学大学院教授を経て、2022年、大阪公立大学の開学に伴い現職。現在は学長特別補佐も務める。三菱電機勤務時代に工学博士号を取得。大学、企業時代はサッカーに励む。コーチを務めた高校が全国大会に出場したこともある。5年前にテニスを始め再度スポーツする喜びに出合うとともに、そこでの人との出会いも楽しんでいる。
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