ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

自分で自分を売り込むくらいの気概を

世界に先駆けて有機触媒の開発に成功した丸岡啓二氏。
日本と中国では、企業も研究者も本気度が違うと喝破する。

Keiji Maruoka

丸岡啓二

京都大学大学院薬学研究科 特任教授

研究テーマを大転換

 長い人生には何度か転機が訪れることがあります。私の場合もこれまで何度か転機がありました。中でも最も大きな転換点となったのは、1995年、名古屋大学から北海道大学へ転じたときのことでした。

 北海道大学では大学院理学研究科化学専攻の有機金属化学研究室の担当になりました。大学院重点化のため新たに設置された研究室でした。

北海道大学時代、理学研究科の野球大会にて学生たちと

 前任教授の研究室を引き継いだのであれば、それまで使っていた機器や実験器具が残っているのが通例です。研究室に所属していた大学院生や学部生もそのままいるでしょう。ところがこのときは新設の研究室だったため、がらんとした部屋があるだけで、機器も実験器具もまったくありませんでした。研究費もごくわずかで、研究室には博士研究員1人と学部4年生が5人だけ。4年生といえども、研究に関しては素人同然という状態でした。「この様子では1、2年間、研究は何もできそうもない」

 そう感じた私はこれを機に、思い切って研究テーマを全面的に変えることにしました。

 北海道大学の構内には、有名なウイリアム・スミス・クラーク博士の胸像があります。博士の言葉としては「Boys, be ambitious」(少年よ、大志を抱け)がよく知られています。また、北海道では「Frontier spirit」(開拓者精神)の言葉も耳にし、研究をするうえでもこの2つの言葉はとても重要なことだと感銘を受けました。

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